2019年11月11日月曜日

O、Iiyama Cyclocross

2019年11月10日、JCX第3戦飯山大会(シクロクロスミーティング第4戦飯山大会)。
飯山らしい秋空の中、まるで全日本選手権といえる豪華な顔ぶれで展開されたアグレッシブなレース。190名のライダーが飯山市長峰運動公園に特設された国内屈指と評して貰えるテクニカルな飯山レイアウトを駆け、そして舞った。
強い者が勝つ。レーシングである以上、偶然ではなく選手のパフォーマンスが正確に成績となるよう今の飯山にできる全てを用意した。

DJ河合桂馬は更に進化した飯山CX専用音楽を。エスキーナのキッチンバスは食材が切れる程の賑わい。地元のWASHIMORIは大人気の信州そばを振る舞う。観光広報テントはグラベルとウィンタースポーツを発信。フルマークスは最高のアウトドアウェアを並べ、売り上げから義援金を。競技運営だけでなく、ホスピタリティもワンチームとなって飯山スタイルを表現してくれる。

自然は飯山に甚大な被害をもたらした。でも、この日はコースにスパイスを加えようと朝方まで最適な雨を降らせ、スタートには最高の秋晴れを、閉幕時間には綺麗な夕焼けを演出してくれた。この日は決して忘れることはないだろう。

この日を迎えることができないかも知れないと覚悟した朝、自分はUCIレースのために欧州の地にいた。日本では台風19号による水害が各地で起き、NAGANOは堤防決壊による甚大な災害になっていると現地のニュースでも流れていた。
広大な大河のように氾濫したその映像を見れば、どこがどうなっているかは容易に理解できた。自分がとてもよく知る場所ばかり。地形も畑の位置も小さな水路も、家屋も駐車場の車種すらリアルに想像できる。
辛かった。直ぐにでも帰国したかった。目の前には東京オリンピックに向かうためにとても重要なレースが続く。スポーツとは言え、選手たちは自分の生活・家族の思いを背負ってここに来ている。苦しい日々だった。

飯山に帰れたのは災害発生から2週目。
自分の帰国を待っていた人たちとのミーティングを繰り返した。しかし大会事務局を置く飯山市からの言葉は想像もできないものだった。
「開催して欲しい」
「中止は簡単。でもそうじゃない」
飯山市役所は過去にない程の浸水被害にあい、庁舎でも街でも休みなく総動員で復旧にあたっていた最中のミーティング。大会スタッフも自ら被災しながら市民への援助を行っている。今後の二次被害や終わりが見えない復旧活動を考えれば、イベントの中止は当たり前の状況だった。
ミーティングが終わり、まだ水害の泥跡が残るトイレに入った。目にゴミが入って仕方ない。そこには感謝しかなく、同時に一人では決してできないこの大会を絶対に成功させなければならないという強い決意が生まれた。
開催決定と同時にエリートライダーたちにもメッセージを発信した。どうか飯山に来て元気に走って欲しいと。選手たちも直ぐに反応してくれた。
「行きます」
「大会を開催していただきありがとうございます」
武者震いしない訳がない。
TEAM BRIDGESTONE Cyclingや地元の選手たちも杭打ちから支援に入ってくれ、信州大学からもスタッフ援助の申し出があった。スポンサーからは愛情たっぷりの支援。他県からも大会ボランティアが会場に入り、連日手足を汚しての作業を続けていただいた。

走る選手たちを思い浮かべ、完成したときのラインを頭の中に再現する。もうこの場所に何本の杭を打ってきただろう。いつもと同じ場所に同じように打てば簡単なことのように思えるが、この会場でのレースを重ねるたびに新しいアイディアが発生してくるからコースディレクションは難しい。一見例年同様に見えるラインも2019バージョンに調整するため、遠くを眺めては杭を打つ。どんなに時間があっても余ることはない。あっと言う間に日暮れになっていく。

日曜の朝、レースがはじまる3時間以上も前からクルマがどんどんと会場入り。コースを見ながら攻略方法を話し合っている人、コーヒー片手に朝ご飯をつくる人、紅葉した山々を写メする人。。。400名程の人で特設会場が埋まっていく。紅葉真っ盛りの山々と、太陽に反射するコーステープの中を走る選手たちの躍動線が、静と動を美しく表現していてとても綺麗だ。

レースが進むにつれ、カテゴリーレベルが上がる。ライダー数も増え、フルガスでギリギリのラインを攻めることが多くなるため、何度直してもコーステープが切れたり、杭が倒れてしまう。強固に設置した鉄杭とアルペンポールでさえだ。どんな時間帯でも飯山ラインを失わないよう、マーシャルも懸命に補修作業にあたっていた。自分もアシストに入り、走行をできるだけ邪魔しないよう身体を丸めてテープとネットを補修していたのだが、そのときコースを通過する選手からある言葉をかけられた。
「直してくれてありがとうございます」
驚いた。このハードな飯山のコースを走る選手の負荷を考えれば、言葉を発することだけでも簡単じゃない。次の選手が迫ってきた。
「がんばってください」
一体どうなってるんだ。選手たちに励まされているようだ。
「ご苦労様です」
おかしい。このレースを走っている選手たちはおかしい。限界で走りながらスタッフを労うなんて本当におかしい。

レースは全て予定通りに完了し、スタッフ全員が笑顔で閉幕した。そして沢山の人に声をかけて頂いた。
「開催してもらってありがとう」
「飯山、最高に楽しかった」
「また来年もよろしくお願いします」
「身体大事にしてね」

人はどうしてそんなに優しいのだろう。
自分にこんな優しさがあるだろうか。
シクロクロスというスポーツを通じて、感謝という言葉の意味を知った。

飯山に集まって頂いた全ての方々に。

ありがとうございました。
また来年、必ず。




























































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