2020年3月22日日曜日

S、Friends

書き残しておこうと思う。
「トモダチ」
コロナ、パンデミック、というワードが世界を席巻している中だが、世界中にいる「トモダチ」の笑顔は変わっていない。国の事情、己の環境は違っていても、いつでも繋がっている。
知り合いと「トモダチ」は違う。互いを尊重し、時にぶつかり合い、一切れのパンを分かち合える相手はいったい何人いるだろう。自分の保身・利益・権力のために下心のある関係はどんなに仲良しでも「トモダチ」ではない。
世界中を飛び回るようになって、あらためて「トモダチ」の存在を思い知る。言葉はあまり意味を成さないことも知った。目を合わせなくとも、声にしなくても、その存在だけで「トモダチ」だと断言できる不思議。

この冬、彼は「トモダチ」の思い全部をのせてスタートを切った。日本一を決める大舞台。多くの人やマスコミから何度も期待されてきた優勝を手にするラストチャンス。彼はいつものようにリラックスしてファーストラップに入る。全国から集まった大勢の声援が会場の緊張感を倍増させていく。これまで何度も挑戦して勝てなかったこのレースの中間ラップはトップ。でも応援する「トモダチ」はそのことを知らない。見えなくなった彼の走る方向をずっと目で追いかけている。そして向こうの深い森。誰も選手が見えない孤独になる場所に向かって友達は叫んだ。
「行けっ、お前はもっと行けるんだ、行けーーー!」
もう声が擦れている。そして、何度も何度も何度も彼の名前を連呼し続けた。
誰も見えない場所に向かって、勝つタイムならそこにいるだろうタイミングでずっと叫んでいる姿。その「トモダチ」は一度もこの大舞台に立てずに引退するメンバーたち。彼は更にラップを上げ、「トモダチ」の目の前を誰よりも速く走り抜け、フィニッシュへと向かった。
ドラマのような光景がそこにあった。心が震えた。彼はこんなにもすごい「トモダチ」に囲まれて、どんなに幸せな毎日だったろう。あの大ケガの時も、病気になった時も、悔しいあの日も、どんなに心強かっただろう。

ありがとう、トモダチ。
次、いつ会えるかは分からないけど、いつも繋がっているはずだ。
世界の舞台で、また。









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