R、チャンピオン
2017年も既に2月。あと11か月もあると見るか、あと11か月しかないと考えるか。
今2017年シーズン、自分の手元から3つのナショナルチャンピオンを創出しなければならないと誓っていた。
そのひとつが今日叶った。
まわりの同級生よりも数年間も遅く始めたクロスカントリースキー。でも毎日毎日大好きな雪に戯れ、全身びちょ濡れになり、鼻水を垂らしながら、真っ暗になるまで黙々とスキーを滑らせていたあの姿が、今日のフィニッシュに重なる。
吹雪の中でも、風邪熱がある日もただ「楽しい」と彼は言い、雪が消えていくと寂しくて遣る瀬ない表情だった。彼の生活に欠損があるとしたら、それは全てスキーのせいだろう。
クロスカントリースキーは超絶な機材スポーツ。しかし機材は他人からのもらい物や中古品で賄い、決して贅沢な体制ではなかった。友達が毎年素晴らしい最新機材を更新してもらう姿にきっと羨ましい気持ちはあったろう。でも彼は一言も欲しいと言わなかった。必要なのは、とにかく少しでも長くスキーに乗れる環境、できるだけ速く進む技術だった。
何度も何度もビデオを見直し、ワックスの仕上げにこだわってきた。
いつしか大人の世界が彼に機材のアドバイスをするようになる。この方がいい、これでないと勝てないぞ・・・と。。でも彼にとってそれは大きな問題ではなかった。重要なのは自分に最適な状態で走れるものか否かであること。
毎日状態の異なる雪質、伸びる伸長、増える体重、多い情報。。。その中でベストな走りをするにはどうしたらいいかを、まるでパズルのピースを合わせるように楽しんできた。
今日のスタート前、こうアドバイスした。
「思い通りに行ってこい。今日、この場所にいる中で一番強い。だから何が起きても慌てるな。自分を失わないだけで充分。」
スタート。誰もが全国制覇を望み、猛烈な勢いでスタートダッシュする中、ひとりリラックスした大きなストライドでホームストレートを駆けていく。
「勝った」そう確信した。
小さな頃からちっとも変わらない、楽しそうな滑走だった。全身でそれを表現していた。
フィニッシュでの歓喜。初めて褒めた。
そのポディウムからの景色はこれからの人生の糧。多くの方へ感謝を。
おめでとう。
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