2017年8月10日木曜日

R、全日本そしてワールドカップ・カナダ

7月23日、2017全日本選手権。
結果、アンカーは沢田選手4位、平野選手5位という、チームとして目指したナショナルチャンピオン獲得は叶わず、失意の富士見を後にした。
単純に言えば、この全日本は山本幸平選手が勝つべく走り、9回目の勝利を飾ったという事実。圧倒されたというよりも、日本一を勝ち取ることに悲壮なまでのモガキを見せられた日でもある。
ファストラップは平野選手が奪い、2周回までレースを牽引した。沢田選手はスタート間もない落車から復帰し、ペースダウンする平野選手に代わってパワー全開でポディウムを狙う走りをした。しかしアンカーというチームに求められる結果を得ることはできなかった。
それから2週間。チームは2017シーズントライであるワールドカップ・カナダ、続くアメリカ・ウィンダムでのUCI-HCレースに出発。(今回、ジャパンチームがU23以下を対象にアンカーと同じレースに参加、自分は50%ジャパンチームとして行動)
最高レベルのレースでUCIポイントを着実に獲得すること、日本では競えないワールドクラスの相手と身体を交える走りをすること、を目指す遠征。
内に秘める力の全てを絞り出して挑むレース。
Canada Mont-Sainte。
ここは、過去に世界選手権が行われた場所。ワールドカップでは常連会場であり、ダウンヒルもXCOもダイナミックなコースレイアウトで、日本ではまず用意されない超難易度の高いロックセクションが縦横無尽に置かれている。無造作に見える岩もインスペクションしてみると、その小さなひとつ一つが計算され尽くされていることに気づく。路面のミューも起伏もカメラサービスを意識したようなつくり。WCでも最多の立体交差が用意され、コンパクトな1周4.3㎞のコースは、見る者にどの角度でも興奮を与えるレイアウト。
今大会は、世界戦を前にしたカナダであるため、欧州のワークスライダーの中には参加を敬遠する選手もいたが、トップ20はいつものメンバー。今季負けなしのSCHURTER Ninoを筆頭に強豪がMont-Sainteに揃った。
アンカーは表彰会場を目の前に見るアパートをチーム拠点とした。不測の事態にも完全対応できるだけのパーツアッセンブリをカナダに持ち込んだ。ワールドサポートであるSHIMANOの支援も手厚く、試走で破損したパーツのリペアも行い、万全の体制でレースに挑んだ。
8月6日、14:45ジャストの号砲一発。スタートループ3㎞+4.3㎞×6周のタフなレースがスタート。アンカーの2選手もスタートトラブルなくループに消えていく。
前日の大雨の影響でロックセクションがスリッピーで非常に危険な状態になるのではと心配されたが、レース当日は朝から薄曇り。U23や女子エリートのレースで路面が荒れることはなく、かえって砂が濡れた岩の表面に付着されることで予想よりもグリップできる状態になっていった。
あっと言う間に一列棒状となった集団は、大きな落車もなく驚異的なスピードで難易度の高いロックセクションを淡々と走り抜けていく。タイトコーナーでは加速するための位置取りに関係なく割り込む。登坂では全身を使って強引に競り上がり、ダウンヒルは岩と岩の頂点を結んだ最速ラインに突っ込んでいく。一瞬の隙を逃さず接触しながらも前を抜き、フィニッシュまでのストーリーなんて考えていないのではないかと思う強烈なアタックは、やはりワールドカップなのだと実感する。
ある意味、国別で選手が絞られる世界選手権よりも高レベル層の選手が多く集まるWCに、日本唯一のUCIチームとしてアンカーが挑戦していく意義は重い。
スタートループから1周目
やはりシューターを取り囲んだ集団がレースを牽引。段違いの速さで大集団を引きちぎっていく。しかし、その中でも雑音を立てずにウルトラスムースに走り抜けていくシューターには、誰とも違うオーラがあった。明らかに足を残しながらパック2番手でプッシュしている。
その驚異的な速さに牽引された大集団の後方にアンカー2選手がいた。
沢田選手はゼッケン57番、平野選手は58番。ともに日本人UCIランキング2位と3位だが、WCではスタートグリッド最後尾になる。圧倒的に不利な位置であるが、そこからどこまで上がれるのか、UCIポイントが与えられる60位以内と完走(トップのラップタイムの80%相当の時間差が開くと完走できずにカットされてしまう)を目標としてレースがはじまった。
まるで野山を駆け巡る動物のような凄まじい速さの大集団の後方で、沢田選手が懸命に前の選手を一人ずつパスしようと動く。集団の速さに翻弄されまいとパワー全開のダンシングで前を追いかけていく。
一方、平野選手は前日の試走で痛めた右足の影響で思うようなパワーが出せないが、経験豊富な彼の走りはクレバーで、集団の流れに乗るためにリズムを合わせていく。
アンカーはスタートループで順位をあげ、45番手前後を位置取りする。
2周目
やはりケガの影響は予想以上に大きく、平野選手のペースは上がらない。ペダリングもアンバランス。後続選手に次々パスされ、順位は50番台へと下がっていく。
沢田選手は集団の流れに合わせながら懸命にポジションをあげようとプッシュする。数名の選手と抜きつ抜かれつも他チームにパンクやトラブルが発生しはじめ、順位をキープ。
3周目
平野選手が大きく遅れ始める。身体の動きが固く、キズの痛みを強いられる走りとなり、ここで80%カットとなった。
沢田選手はトップ3が牽引する集団のスピードに対応できないセクションが増えていく。シューターとは毎周回120秒ほどの差を広げられ、小さな集団すらもバラけ、前後の選手と距離が空き始めていき、50番台へと順位を下げる。
4周目
レース全体がシューターを囲むトップ集団に完全支配される。10番手以降はパックが崩壊し、テクニカルフィードでは複数のチームフィーダーが同時にラインに着くことがなくなっていった。
沢田選手は完全に単独走行となる。しかしトップ集団が小さなアタックを繰り返しているため、ラップが高位安定し、ここで5周回目に入ることを許されなかった。
結果
優勝はシューター。今季WC無敗で年間総合チャンピオンを獲得した。5周目の満を持してのアタックで他を圧倒しての優勝だった。「ニノ!」と応援するコース脇の子供達に向けてフィーダーから受け取ったばかりのボトルをさりげなく投げる仕草も、冷静でパワフルな走りもまさしく王者。バイクはチャンピオンを称えるゴールドのロゴが奢られていた。
アンカーは、平野選手が61位、沢田選手が58位でフィニッシュとなった。
チームとしては、多くのスポンサー、サプライヤー、ファンの力で、沢田選手が自身初のエリートで迎えたWCでUCIポイント10点を獲得することができた。しかし、目標である完走を果たすことはできなかった。世界のトップライダーに後塵を浴びせられるラップがなくなるまで、2020年東京五輪の舞台に向かって、アンカーは懸命に強化のスピードを上げていかなければならない。
そして、どんな状況でも果敢に、勇気をもって挑戦し続けていくチームでなければならない。
次週はアメリカ。ウィンダムNYで行われるWINDHAM PRO XCTでUCIハイクラスレースに挑む。
沢山の応援をありがとうございました。







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