2019年10月20日日曜日

O、Kos UCI S1

古代アゴラの遺跡、エーゲ海に浮かぶ医学発祥の島といわれるコス島。ギリシャのステージレース第2週目、KOS UCI S-1。
結果、チームはギリシャでの全ステージを走り抜き、最終日に総合順位を引き上げ、沢田選手が21位、平野選手が27位となり、UCIポイントの獲得に成功した。

アテネから1時間のフライト先にあるトルコを対岸に見るシーリゾート。まだ半袖で問題ない気温。昼間は暑くなるが乾燥していて走りやすく、夜は涼しい気候。長い夏が終わろうとしている街は、シーズンオフ前の最後のバケーションを楽しむ人達で賑わう。
チームはサラミナ島でのレースを終えた翌日にはコス島に渡り、疲労からの回復に努めた。試走も最小限。選手も短い休息ながらマッサージ等でリラックスし、サラミナより更に強力なライバルが増えるだろうこのレースに備えた。

水曜のレジストレーション。やはりエントリーは予想通りだった。このレースがオリンピック出場に大きく影響する国と選手が更に増し、選手層が前週に増して厚く強烈になった。特に2019マラソン世界チャンピオン(COL)はこのステージレースを本気で取りにきているとコメント。スイス、フランス、イタリア、ドイツ、UKなどの強豪国からは、プレオリンピックで静岡にいたメンバーが大勢この島に入った。
昨年とはまるで別物の高いレベルと参加数。主催者側も昨年のラップが当てにならず、選手のレベルアップに合わせた運営が必要になり連日打合せを行っていたほどだ。リニューアルされたコースは非常にラフで、XCTの後半はガレた超高速ダウンヒルになること、XCMでは獲得標高が2000m超とかなり大きいこと、XCOではパスポイントがかなり限定されること、XCCは狭いアーバンクリテリウムでタイム差が付き難いこと、など容易にUCIポイントを獲得できるレースではない。
しかし、チームの使命は変わらない。オリンピック出場を果たすため、このレースに成功しなければならない。チームはバイクを可能な限りリフレッシュ(ハブベアリング、フリーボディまで分解)し、複数のフィードから最適なゾーンを打合せ、可能な限りの準備を行った。選手も抜けきれない疲労や負っているケガを24時間中リカバリーする努力を続けてレースに臨んだ。

17日(木)15:00 XCT 10㎞
1分間隔での個人TTがスタート。オフィシャルホテルがスタート・フィニッシュ会場となっている。コースは50%上って50%下るシンプルなレイアウト。当日は風が強く、明らかにパワーライド向き。ダウンヒルは自然加速を許すとかなり危険な路面。チーム選手にとっては不利な種目であるので、大きなミスを起こさず、トップと2分差程度に収めるクレバーな走りを要求。沢田選手34位、平野選手37位と一見芳しくない順位に見えるが、トップとのタイム差を予定通りの範囲に収めてフィニッシュ。チームプラン通りの初日を迎えた。

18日(金)13:00 XCM ニュートラル走行10km+60㎞
このマラソンでのタイム差がステージ総合に大きく影響する。各選手はシーラント(パンク修理剤)の増量、高圧ボンベや替チューブをバイクに装着し、XCOとは異なる重装備となる。テクニカルフィードでは、スペアホイールだけでなく、張替用のタイヤ単体やバイク1台分のアッセンブリパーツを持ち込むチームも少なくない。
序盤は、10㎞におよぶ街中のニュートラル走行を終えてのリアルスタート。ここでトラブルが起きる。沢田選手が一気に加速した集団の膨らみで荒れたコース脇に押し出され、バイクを正面から異物に衝突させてストップ。男女の大集団の最後尾になり、35位と大きく遅れてしまう。平野選手もバイクに乗れない押しの渋滞に巻き込まれて34位通過。先頭はアルカンシェルライダーを含む7名のパックがマラソンとは思えないハイスピードで展開。
中盤、沢田選手32位、平野選手33位。序盤から飛び出したライダーがペースダウンする中で、先頭は単独で抜けたマラソン世界チャンピオン。チーム2選手は、乱れる前後のライバルの中で落ち着いて前の選手を捉え続ける。
終盤、沢田選手が強烈なプッシュで25位に浮上。ワールドライダーすらキャンセルする程の厳しい展開の中でポジティブだ。平野選手はまだ大胆なダンシングができないが、マイペースで自分の走りを刻み、前の選手をパスして30位に上がった。
ファイナル、沢田選手が最後まで攻め続け、順位を21位まで引き上げてフィニッシュ。平野選手は限定される身体の動きに耐えて28位フィニッシュ。ここまでの総合成績でも、21位、28位となった。

19日(土)13:00 XCO スタートループ500m×2+6㎞×5LAP
スレージ3日目のXCO。破損したバイクを完全に修復し、最低でも総合ポジションキープできる走りを目標にした。2周しなければならないスタートループはたった4名幅しかない狭幅のガレた道。しかも数10m先からはシングルトラック。ループから解放されてからの激坂は渋滞必須だ。グリッドは総合成績順で並ぶため、2選手ともスタートは集団後方に位置しなければならない。山岳でのパスポイントで確実に上がり、ダウンヒルでミスのない走りが求められた。
序盤、渋滞が解消されたレース集団はXCM同様にトップ7が先頭パックを形成してレースをリード。その後ろは小さなパックが複数存在。沢田選手は自分より実力上の選手に混じり22~26番手のパックで展開した。平野選手は1周回で5名をパスし、28位まで上がってきた。
中盤、先頭は5名に絞られ、ラップを維持。その後方の各パックは一旦バラバラになりながらも再編成され、トップ15が後方集団を引き離していく格好に。順位の入れ替わりも激しくなっていく。ここでリタイアを選ぶ選手も出てきた。チーム2選手は序盤の位置をキープしたままレースを進める。
終盤、先頭集団はバラバラに。中間ラップは上がっている。沢田選手はダウンヒルでも積極的にプッシュするが、順位を上げることが中々できない。平野選手は単独走行になりながらも25番手前後の集団が見える位置まで上がってきた。
ファイナル、沢田選手は総合順位に影響するライダーとパック。逃げてタイム差を生もうと最後までプッシュするが、タイム差を引き出すことは叶わず、26位でフィニッシュ。平野選手は順位こそ変わらないが、前集団に詰め寄る走りを見せ、タイム差を縮小させて28位でのフルラップ。

20日(日)12:30 XCC 1.2㎞×30分+1周
ステージ最終日。ここまで一滴の雨もない快晴のコス島。レースはコス島のメインポートの石畳とコンクリート路で行われた。会場は紀元前からある歴史的な古港の中心地を使い、古城や歴史的な樹木などの貴重な遺産を縫うようにコースが敷かれた。カフェのテーブルとテーブルの間を通すなど、日本では到底あり得ないシチュエーション。レイアウトも抜きどころの少ないクリテリウムと言った方がいい。最大高低差は石畳の階段を上がり、下る程度。ほぼフラットの1周1.2㎞のアーバンコース。
大会3日目までの総合成績でステージング。2選手とも前日までに大きくジャンプアップできていないため隊列の後方がスタートグリッド。コースを考えると中切れを起こされたり、バイクトラブルを起こせば、まず復帰は困難。しかもフルパワーを使ってスピードに乗っても直ぐに滑りやすいタイトコーナーが待っている。チームはトラブルなくフルラップで走ることを優先し、総合タイムで秒差にある選手だけをマーク。スタートでの落車はなく、街中の大歓声の中で1周2分程のサーキットバトルが始まった。
序盤は一列棒状。100m程の長い高速列車が観客の眼の前を通過するたびに大声援が起きる。2選手ともスタートポジションで展開。
中盤、先頭パック15名が抜け出し、セカンドパックと3秒差。そのセカンドパックを目の前で追うサードパックにチーム2選手がいる。平野選手を前に出してチームで協調しながら前の集団に追いつこうとプッシュする。しかし石畳の階段上りで平野選手のチェーンが暴れて絡みストップ。沢田選手が平野選手にかわって前に出て、サードパックを引き上げようとプッシュ。
終盤、沢田選手のいるサードパックの前方20秒先には16番手の選手が独走していた。恐らく残り5分がラストチャンス。しかしこのパックは互いに協調できず、徐々に崩壊。終盤でパックがバラバラになっていく。沢田選手は攻め続けるが、ラップタイムを少しずつ落としてしまう。バイクを修復してリスタートした平野選手は単独走行になってしまい、不利な状況だが、コーナーグリップをギリギリまで攻める走りで26番手通過。
ファイナルラップ、沢田選手が単独でプッシュ。総合順位で秒差の選手が目の前にいるため、攻め続けるしかない。一方、平野選手もスピードを殺さない。レースはフィニッシュラインを過ぎるまで何が起きるか分からないことを実践している。
ここでファンになってくれた大会スタッフたちの「JAPAN!」の大声援が飛ぶ。チームはホームウェイかのような街を疾走した。沢田選手24位、平野選手26位、トップと1分20秒程のタイム差でフルラップ。
結果、第1週のサラミナ島に続き、第2週のコス島での4日間もフル完走した。総合成績で沢田選手21位、平野選手27位。2選手とも満腹とは言えないものの、ライバルのレベルを鑑みると、2大会連続で非常にポジティブなUCIポイントの獲得に成功したと言える。

これでチームは今シーズンの欧州遠征を全て終え、日本に帰国する。一旦、日本での休息をとり、シクロクロスやリカバリートレーニング期間を設けてシーズンラストレースに備える。
そう、最終レース後、BRITISHナショナルチームのコーチから1本のボトルをプレゼントされた。「See you again at the Tokyo Olympics.」チームスタッフも2020年に向けて休みなく戦っている。フィードではチームの壁はなくひとつのチームのように選手を押し出す。沢山のライバルチーム、欧州ナショナルチームとの友情が、更にモチベーションを上げていく。

この遠征も日本から変わらぬ応援、多大な支援をして頂いた全てのスポンサー、サプライヤー、ファン、家族に感謝します。そして、ギリシャの地でチームのために笑顔で協力してくれた多くのファンに感謝します。

TEAM BRIDGESTONE Cyclingは前に進みます。




























2019年10月16日水曜日

O、Salamina UCI-S2

10月6日のプレオリンピックを終え、すぐにチームはギリシャへと渡った。
今シーズン最後のステージレース2連戦がここギリシャで用意されている。インビテーションを受けた第1週目はサラミス島でのS2、そして2週目はコス島でのS1。いずれも欧州主要各国から世界戦トップ30、アルカンシェルライダーなど強豪が集まり、東京オリンピックに向けてランキングを引き上げようと、ナショナルチームを編成し複数のスタッフを要する国、TREKやKROSSなどワークスチームも参戦してきた。

1戦目はサラミス島でのUCI S2ステージレース。10月10日~13日までの4日間。ラフで険しいサラミスの山々とエメラルドグリーンの美しい海を舞台に激しいレースが展開された。
結果、この遠征に調子を合わせて臨んだ沢田選手が総合成績で13位、プレオリンピックで負傷した平野選手がケガをカバーしながらの19位となり、共にUCIポイントを獲得した。
10月10日(木)XCT10㎞、沢田選手24位、平野選手26位
10月11日(金)XCM66㎞、沢田選手12位、平野選手19位
10月12日(土)XCO4.4㎞×6LAP、沢田選手17位、平野選手20位
10月13日(日)XCC2.1㎞×40分、沢田選手20位、平野選手21位
総合成績、沢田選手13位、平野選手19位

4日間の連戦で、しかもレース内容が毎日変わるステージレース。フィジカルとメンタルの両方にタフさが求められ、毎日順位が入れ替わる激しい鍔迫り合いが繰り広げられたSalamina UCI S2。ワンデイXCOを大きく超える総合力とアイディア豊富なアプローチが必要なレースだ。
チームは本年2月にもこの地でステージレースを戦っているが、今回は東京オリンピック出場を目指すトップライダーが集結し、大きくレベルが上がっている。初日のXCTから強烈なプッシュ。最終日のXCCではアタック合戦。トータルパワーが強いだけでなく、順位に影響するライバルの走りを見極める能力、無理をすべきタイミングとタイムを計算できる走りを持ち合わせたスイスの選手がこのレースを制した。
チームの戦略は、初日のXCTではトップに対し最小限のタイム差に留め、2日目のXCMでそのタイム差を取り戻し、3日目のXCOは総合トップ10選手のいるパックで展開し、最終日のXCCは安全に同一ラップでフィニッシュすること。

このレースでは沢田選手の調子が良く、トップ10も見える位置で展開できていた。XCTでのトップとのタイム差は予想範囲の3分弱。それをマラソンでしっかりと短縮して一気に順位を上げた。XCOとXCCではスタートダッシュを決めて本人より強いワールドライダーのパックに入り込む積極展開。特に登坂でのパワーライドでは、ライバルたちを引き離す走りが見られた。それにより、今季彼が上位になることができていないライバルたちを従えて走る場面も多くなり、力は出し切れている。
反面、テクニカルなダウンヒルやコーナーではどうしても前に出ることができない。フランスやスイスの選手たちの軽快でスピードのある走りから徐々に離されてしまう。それにより単独走行になってしまうが、今の沢田選手は決して諦めることはない。どんな状態でもフィニッシュまでプッシュし続けるため、ライバルたちからも一目置かれる存在へと成長してきている。

一方、プレオリンピックで負傷した平野選手はガマンの展開が続いた。腰を岩に強打し、痛みが引かないため、ギリシャの地に来てもダンシングや捻りの動作ができない。真っ直ぐにシッティングし、トルクをしっかり掛ける走りでレースを展開することにした。
連日のレースではパックに乗らず、自身の好む走り方、緩急でレースを進め、今できるベストな状態でステージ4日間を走り切った。徐々にケガから回復してきており、次のコス島では本来の平野選手らしいパンチのある走りが見れるだろう。

10月6日、伊豆のプレオリンピックレースで多くの人がワールドクラスの走りに興奮し、コースレイアウトとその激しさに最新のMTBレースの実情を見ただろう。フランスチームは選手数よりも多いスタッフを日本に送り込み、コースのあらゆるデータを分析していた。トップ選手たちはテールtoノウズで一列棒状となり、パックで走るレース状態を再現して練習している。アイディアの入ったポケットから瞬時に適切なものを取り出すかのようなドロップオフでの走り。ファイナルラップでファストを出すパワー。
オフシーズンであってもアジア選手の遙か上にある走りの裏には、選手の所属チームのメカニックやパーソナルコーチが派遣され、常に選手に帯同する身近で最適な体制を整えていたことに気付いただろうか。
我々チームがUCIレースを重ねる理由がそこにあり、東京オリンピック出場を目指す選手がしのぎを削る今回のレースを戦う意味がここにある。
ライバルの顔ぶれを見ると、それは容易い挑戦でないことは直ぐに理解できる。
しかしチームにはこの挑戦に成功しなければいけない。

多くのスポンサー、サプライヤーの支援、国内外の沢山のファンや家族の応援に感謝し、更に強力なライバルが合流してくるコス島に渡ります。
2019年シーズン、TEAM BRIDGESTONE Cyclingの挑戦は続きます。
引き続き、皆様の応援を宜しくお願い致します。










2019年10月6日日曜日

O、Next fright




新しい出発。
この日は次の自分を見つける大切な時間。
その目標を果たすため、彼らの夢と希望を叶えるため。
年齢は確実に進み、経験も増していくが、少年の頃から変わらないことがある。
将来の自分にとって最も大切なことは何一つ変わらない。
沢山の愛情や友情をありがとう。
今日からの新しい時間が楽しみです。
最大の感謝を。