2018年9月25日火曜日

W、UCI Marathon Sakarya

Sakaryaでの2戦目はUCI Marathon。
チームはXCOとXCSを主軸とするため、マラソンはステージレース以外に出場機会を持たないが、今回は強いインビテーションと、2020世界選手権のコースを見て欲しいとのオルガナイザーの希望があり、出場することにした。
昨日のXCOでの疲労を増幅し、大きなダメージを与えてしまう危険性のある日程だが、我々を含むインビテーションを受けた28か国の選手は全員参加。マラソン専門選手もスイスなど欧州から集まり、スタジアムを飾った。
スタートの雰囲気はXCOのそれとは異なる。引き締まった空気感はなく、リアルレーシングの選手とリカバリーを兼ねた選手が混在し、セレモニースタートは穏やかだ。
朝方は霧に覆われて冷ややかな空気だったが、昼に近づくにつれて真夏日の快晴となり、ハードなコースレイアウトに相まって厳しい環境となった。
9月23日9:30、総距離86㎞、獲得標高2831m、山岳ループ2周回のレースがスタート。
自分はクルマのエンジンをかけ、スタートの合図を横目に直ぐに15㎞先のフィードへと向かう。しかし警察が周辺の道路を閉鎖したため、住民のクルマも混雑してしまい、中々目的地に向かえない。ここを行かないとフィードに辿り着けないグラベルの1本道。警察がゲートで「戻れ」と叫ぶが、こちらも引くわけにはいかない。意を決して「I'm from JAPAN...」と言い始めると「JAPAN?!」「OK,Go」と笑顔でゲートを開放してくれた。選手が到着する前にフィードまで辿り着けるかどうかの不安が消失し、何だかハッピーな気分になる。トルコが更に好きになった出来事だ。
フィードは山岳入口の小さな村の公園にあった。ここではマラソンレースらしい装備で各スタッフが構えていた。大量のフード、水、オイル、アッセンブリパーツ。XCOなら過剰なレベルだが、やはりマラソンでは必須なのだろう。チームはレンタカーにフル装備だからサポート体制は負けない。。
1周目、先頭は30名程の大集団を形成して入ってきた。まだけん制しているのか、ゆったりした走りに見える。平野選手も沢田選手もここに位置し、厳しい山岳コースに向かって行く。試走ができていないだけに心配だが、コースプロフィールを見る限り厳しい登坂が繰り返されることがわかる。フィードからは選手のパフォーマンスを信じるしかない。
2周目、先頭は昨日のXCOで勝ったIVANOV選手。彼は後続を1分以上離しフィードに。バイクを降りて自分でチェーンオイルアップを行い、ゆっくり給水とジェルをとって、ダブルボトルを交換してリスタートしていく。強い選手ほど、フィードでのリフレッシュに時間を費やしてパフォーマンスを維持できる。それをギリシャ、ラトビア、ポーランドなどのマラソン有力選手が追走。その後ろ10位~16位集団を利用するように沢田選手が入ってきた。疲れはあるが粋のある顔つき。シングルリザルトを期待できる位置にいる。平野選手は30位前後で単独で入ってきた。今日は無理しないことを指示していたが、やはり辛そうだ。立ち止まり、ダブルボトルを交換して尻を押した。
もう選手をサポートすることができない。無事のフィニッシュを祈るしかない。
フィニッシュするスタジアムに急いで戻った。IVANOV選手の彼女を隣席に、後ろ席にトルコの学生を乗せて。。
スタートから3時間30分になろうとしているところにIVANOV選手が独走でフィニッシュ。連日の勝利となった。
沢田選手は後で聞くと「もうイヤだ!」と怒りが湧いてきたという最後の平坦路もプッシュし、一人を交わして10位でフィニッシュ。UCIポイント32点を獲得。マラソン専門の欧州勢の中でも手応えのある4時間弱の走りを魅せてくれた。
平野選手はあえてパワーを抑制しながらハードな4時間30分近いレースを26位でフィニッシュ。途中、携帯した食料を座って食べたという。73名中、わずか31名しか許されなかった過酷なレースを完走した。
これでSakaryaでのレースが終了。Sakaryaでの滞在を続けながらリカバリーを行い、今週末にはイスタンブールに移動して次のUCI-C1XCOレースにチャレンジする。
沢山の応援・支援に感謝!




W、Sakarya MTB Cup UCI-1XCO

世界選手権の閉幕でビックレースが落ち着き、久しぶりに日本国内でビジネスと村祭り、菜の花畑の準備。やはり産まれた場所が一番いいなと思いつつ、今週から再び海外へ。10月第1週までトルコ、10月中旬にはギリシャ、あと4レースで2018MTB シーズンをクローズする計画。
今回のトルコは春の遠征から強いインビテーションを受けていた。フライトはターキッシュエアラインが全額サポートするから来て欲しいと。。
トルコは2020MTBマラソン世界選手権を控え、国をあげて自転車競技を育成強化しようとしている。UCIレースも連戦とすることで、欧州や中東、アジアからもより遠征しやすく、それはよりレベルの高い多国籍の選手が集まることになり、必然的に知名度とレースレベルが上がっていく。トルコのサイクルスポーツは益々盛り上がるに違いない。
この秋季遠征はXCO3レース、XCS1レースをプログラムした。それも貪欲な強い欧州勢が沢山エントリーされてくることが予想されていたので、決して容易にUCIポイントを獲得できるとは考えていない。たった1ポイントでも獲得することにどれだけプッシュできるか、今ある出力や調整力がどこまでなのか、を疲労の溜まるシーズン後半だからこそ暴露したいという意図もあった。ある意味、これは東京オリンピックに向かって行くためのテストレースでもある。
その最初のレースとなるのがSakarya MTB Cup。イスタンブールからクルマで2時間程にあるSakaryaは観光客を殆ど見ないコンパクトな街。しかし、郊外には自転車ナショナルトレーニングセンターと常設XCOコース、BMXコースを新築しており、Sakaryaは世界最先端の設備をもつ街だとトルコの競技連盟は語る。確かにいつものナチュラルでオーガニックなトルコのレースとはまるで異なる環境で、レース会場はまるで世界選手権やワールドカップのような空気と装備。警官の動員数も半端ではない。XCOコースは完全に人工造成で、丘にある新興住宅街の真ん中にある公園そのものが自転車専用のパークになっている。周辺の治安も問題のない雰囲気で、レースを行うロケーションとしては素晴らしい。過去にあった大震災で崩壊した街を再建し、今日に至っているのだという。海外から多くの国の選手が集まることを住民も大歓迎してくれた。
ただ、XCOコースはこのレースがオープニング。 レイアウトは現在のレースシーンを強く意識していて素晴らしいのだが、ほぼ全路に敷かれた砂利がレーシングでの流れを遮断してしまう。無用な落車やスリップを誘発し、長い登坂こそないものの、ドライなのに誰も登坂できない激坂もある。当然に渋滞を招きやすく走り辛いコースという印象。単独走行になれば前のパックとの差を詰めることは困難になることは必須だ。画像で見るより遥かに集中力の必要なコース。チームはレース2日前から会場に入り、入念なインスペクションを行い、バイクはギア比もタイヤもハイスピードなセッティングとした。(シュワルベのNewタイプタイヤ、RacingRAY/Ralphも実戦投入)
9月22日13:30定刻、2列目に平野選手、4列目に沢田選手。WCさながらの豪華な雰囲気の中、号砲一発で8周回のレースがスタート。大集団が土煙を上げてオープニングラップへ入っていく。先頭パックはこのレースを制することになるIVANOV選手(RUS)、そして今季から会場地元のSALCANOSakaryaBB.ProTeamに加入したAnton選手(RUS)、Martins選手(LAT)らワールドカッパーが形成。アジアで馴染みのKirill選手(KAZ)もFaraz選手(IRI)もこのレースに参加しており、スタートから予想したラップより速い。これまで経験してきたトルコのどのレースよりも速い展開だ。
チーム2選手はトラブルはなくスムースなスタートとなったが、レース序盤は30位前後のミドルパックに埋まる展開。砂利登坂などでの渋滞も影響し、1周目から10名程の先頭パックを逃してしまう。
2周目、先頭のスピードは速く、大きなパックはどんどん崩壊していく。一方、70名程の選手は長蛇になり、パックでの圧迫は徐々に解消されていく。その中を沢田選手は丁寧に前の選手をパスし順位を20位前後に上げていく。平野選手は前後の選手から抜け出せなく30位前後で動きが停滞。
3周目、沢田選手が積極的なプッシュを続ける。バイクを降りなければならない激坂シーンではこのレース最速ラップ。誰よりも早くバイクを降りて登り切ってからの乗車も早い。シクロクロスでの技術がよく表現され、50mもない短い区間でも数名を抜いていった。平野選手は苦しい展開が続く。彼本来のダンシングは砂利だらけのスリッピーでルーズな路面がスポイルしているようだ。
4周目、レース全体が落ち着き始める。先頭のIVANOV選手が非常に速いペースで単独逃げを決め、それを追うべきセカンドパックも徐々に崩壊し、破線になっていく。沢田選手も平野選手も大きな動きを見せることができない。
5周目、ポディウムを狙う選手たちが下位の選手をラップし始める。会場は交差・フライオーバーが多いため、誰が何番を走るのかが疑わしい風景になってきた。沢田選手は充分な強化期間を経てこのレースにエントリーしており、中盤もパフォーマンスは落ちない。1名ずつ前を追い、UCIポイント獲得順位が見える位置まで上がってきた。平野選手はペースダウンはしないものの強いプッシュができない。
6周目、IVANOV選手は2位以下との差が大きく拡大してもプッシュを止めない。ポディウムを狙うトップ5はそれぞれ1分ほどの間隔で先頭を追いかけていく。沢田選手はパックから抜け出し単独走行に。平野選手は復調を見ることができない苦しい展開。
7周目、前方に見える選手を諦めずに追いかける沢田選手は16位まであがってきた。単独走行では難しくなるプッシュを繰り返す。一方、平野選手は精彩を欠いたままガマンの走りを強いられている。
8周目、80%カットで多くの選手がレースを降りていく中、平野選手もこれに該当。マイナス1ラップでレースを終えた。課題は分かっているのでこの遠征中に修正可能だと信じている。沢田選手はたった23名の完走しか許されなかったこのレースを16位でフィニッシュした。アジア大会後の強化の証が見れたレース展開だった。
チームとしては、残念ながらこのクラス1レースでUCIポイントを獲得することは叶わなかった。しかしライバルのレベルを鑑みた場合、このレースで勝つことは、ワールドカップで20番台を走ること、ポイントを狙う位置で走ることはナショナルチャンピオン・アジアチャンピオンの獲得に繋がる。こうしたレースで確実に進化しながら、挑戦を続けることが大切だ。
まだ始まったばかりの秋季遠征だが、このチーム体制、遠征、機材をサポートしてくれる全てのスポンサー、サプライヤー、ファン、家族に感謝します。必ず良い土産をもって帰国します。
次はUCI-3マラソンSakarya。









2018年9月1日土曜日

W、Backstage for World Cup

UCI MountainBikeWorldCup。3月の南アフリカから開幕し、先のフランスで閉幕したが、ワールドカップの裏舞台については、レーシングストーリー、メカニックの作業風景や機材、マネージャーのコメントは記事にされるが、そこに至る裏側までは伝わらない。。。
WCは一発大当たりしやる!生き残ってやる!全開バリバリ!が繰り広げられる世界で最高にハードな場所。ほんの少しのズレやミスがあったらあっという間に切り捨てられていく過酷な場所だ。選手層も信じられないほどに分厚く、バイクに対する社会の目もまるで違う。
欧州ではU23までに有力チームと契約できなければ、どんなに有能な人材であっても選手を引退し社会で働いて税金を払う。WCトップ30に入る実力があってもプライベートチームとして親や友人がサポートに入る姿も多い。エリート女性はトップ10でもテントのない自分の車から試走に行く。シングルゼッケンの選手でもフィードに荷物を引き取りに行く。2世代前のフレームやフォークなんてザラにある。タイヤのノブもボロボロだったりする。スペアホイールは選手が直前まで管理し、自らスタート前にスタッフに託す。自分がレースで走らせるかも知れないのだから。ローラー台も使い終わったら選手が直ぐに畳んで車に持ち込む。盗まれたら今後の遠征に影響するのだから。新型XTR、EAGLEは世界で称賛されるレベルの選手が使うべき品質なのだと分かるだろう。あのレベルでさえXT、11Sだ。
UCIエリートチームは世界最高峰のチーム体制が約束された選手だけが集う。そして、その生活スタイルは研ぎ澄まされ、僅かな無駄も惜しみ、生き残りをかけて凌ぎを削っている。そして、そこに到達しようとする選手がどんな行動をし、どんな生活を送っているのかを学ぶことも必要だろう。弱い選手、弱いチームに所属する人ほど、身の丈以上の高い目標を掲げる反面、生活も環境も他人任せ、機材任せになっているように思う。
日本では「思いは通じる」「自分を出せば結果はついてくる」「世界のトップになりたい」「勝てるように頑張る」「次はもっと」「オリンピック目指して」といったコメントが氾濫している。気持ちはとても良く分かる。
でもどんなに日本で練習を重ねても、どんなに素晴らしい機材を手にしても、レースへの厳しくも精度の高いアプローチが確立できなければ、決して高い目標を達成することは出来ないだろう。
それは挨拶する、しっかりと食事する、洗濯物をたたむ、会話する、きちっと聞く、学びとる、感謝するといった日常生活の基本からも求められる精度だ。その宿舎をどう快適にできるかを考えて行動することだ。何が自分のリスクとなってくるかを考察することだ。
日本はとても裕福で、弱い国。「そのレベルで機材のスポンサーシップがあるの?」「契約金まであるの?」「みんな儲かるの?」「あなたの存在価値は?」「ナショナルチャンピオンジャージって売ってるの?」「日本はクレイジーなんだ」と思われていることを知るべきだろう。要は日本は世界から舐められている。
残念ながら今日のJAPANチームは世界で対等に戦えるレベルにない。本来、ナショナルチームは世界に実力行使できる日本人の最高レベルで構成され、2020東京を控えて最高潮に強いチームであって欲しい。現地に行ってから短期合宿し、教育されているようでは世界に近づける訳がない。他人任せでは進化しない。
世界をギャフンと言わせるには世界に飛び出すしかない。日本人で複数のワールドカップを戦う選手は極一部。UCIチームのブリヂストンですら年間UCIレースは20戦程。世界を狙う意思があるのなら、海外の超絶な厳しい環境に身を投じて、傷だらけで学びながら例え1㎜でも確実な進化を果たさなければ強くならない。

欲しいものは買おう、それが自分を強くするならば。
ガマンしよう、それで自分に勝てるなら。
感謝しよう、それが必ず支えとなる。
自分は想像以上、覚醒させられるはずだ。

TRKWorksは投資する。本気の人材だけをサポートしていく。

<追伸>食材購入のために行ったスーパーに置いてあった地元新聞。選手が開くと偶然自分とそっくりな人を発見。。。いつの間に。