2016年9月26日月曜日

T、CJ1妙高杉ノ原決勝

9月24日、CJ1妙高杉ノ原が終了。
アンカーは沢田選手が優勝、平野選手が3位となり開幕から続くチームの表彰台をキープ。
そして沢田選手は先のCJ1白馬でのエリート初勝利からの連勝となった。
秋雨で低温の妙高高原。常に白い空気が一帯を取り巻き、降雨で黒土の路面は煉りあがり、草芝が繊維のようにリアディレーラーやスプロケットに絡みつく。1周回4㎞に満たず特徴のないコースレイアウトだが、雨によって全てが混沌とするプロフィールに変貌した。そして土曜がXCO決勝というCJ1では珍しい日程もあり、コンディショニングにも工夫が必要となった。
決勝当日、昨日までの雨はやみ、曇空ながら舗装路は乾いていく。しかしやはり水分率の高い林間部の路面は蒸発しない。ジュニアやアドバンスクラスで土締まりが弱かった箇所は更に煉り上がりが強くなっていった。各チームはタイヤ選択に悩む。前クラスの選手の走りを観察したり、さりげなく他チームブースを横目で見たりと情報戦が繰り広げられる。
しかしアンカーに悩みは皆無。勝つために必要な区間はどこか、距離は? 乗車できない区間はランニングと割り切り、スピードが計算できるコース距離からタイヤを決定。レインタイヤではなく、普段のレースで実績のあるタイヤから潔く選択した。そしてXR9はフレームとパーツに被膜をつくり、あらゆる部位の泥付着を軽減。チェーンはGreenDriveでマージン。そこにシマノDi2の抜群なシフト力が加わり、バイクは完璧に仕上がった。
沢田選手は前大会と同様、飯山での厳しいトレーニングを行い、早々と会場に入った。しかし雨と寒さから風邪気味で体調は万全ではなかった。前大会から高めた気持ちと、自分を追い込み過ぎてしまうメニューから疲労も重なる。
だが、今の沢田選手にはそれを冷静に見つめる力がある。こちらの客観的な意見と評価をしっかりと受け止め、勝つために必要な走りに集中できていた。スタートから平林選手との2パックを形成。3位以下は2周回目で30秒のビハインド。結局フィニッシュまでこの二人が容認されたように一騎打ちの格好となった。沢田選手は泥試合が得意だ。マウンテンバイカーにはまず見ない後傾加重を巧みに使い、食らいつく平林選手にテクニカルゾーンでプレッシャーをかけていく。登り区間では平林選手のパワフルな走りに負けない安定したラップを刻み、最後までミスを犯さない堅実な走りで2連勝を手中にした。フィニッシュエリアで待つ観客とのハンドタッチも勝者の様になってきた。
一方、平野選手はスタートから5番手あたり。沢田選手のいる先頭パックを後ろから捉える位置で展開した。3周回目、平野選手がファストラップをたたき出し、先頭から50秒ほどに開いた差を一気に20秒まで縮めてきた。
彼は自分の体調やレース環境に対する感度がいい。集団から単独3位にあがり、以降は表彰台を確実にキープする位置で他の選手を寄せ付けなかった。
アンカーとしては二人が表彰台に上った。しかし目指すはここではない。もっと強いアンカーはまだこの先にある。チームは多くのファン、スポンサー、サプライヤーに支えられている。その力がこうして表現されていく。シーズンは続く。選手とスタッフの力を結集してどれだけ強くなれるか、挑戦し続けたい。









2016年9月19日月曜日

T、伝承する

48年ぶりの地蔵堂の修繕が竣工した。
約一か月半にわたり、大工とは何度も何度も意見を交わし、時には一緒に作業をした。
屋根裏を覗けば、昔の村人たちの苦労や思いが見えた。大きな梁は余計な切り込みが沢山あることから建造時に中古を利用していたことがわかった。今はトタンで覆う屋根も、もとは萱葺きで緩んでいないワラ紐の結び方に感動してしまう。格天井の古い板は、48年前の大修繕で村人が寄付で集った絵画や詩や模様が描かれているため、全て天井裏に収めることにした。
土壁は何度も襲っている地震にも耐え、表層のひび割れは丁寧に補修して白塗りを施した。
腰壁板もやはり古来の素材質が良い。傷みはあるが現代の合板に引けをとらない歪のなさと耐候性があるから丁寧に磨き直して防腐防汚塗装を行った。
床板は従来の板を残し、その上に欅板を重ね、将来傷みやすいだろう縁側は交換可能な工夫をした。
そして今、自分は村人全員で行う供養の日、竣工記念の式典をひかえ、心静かに木版に向かっている。脈々と伝承されてきた地蔵菩薩が描かれる大切な御守をひとつひとつ刷っていく。その時間は無心。一切の欲がない不思議な時間になる。外は大雨でも凛としていて気持ちがいい。
そう、伝承の中継ぎができていることに感謝しなければいけない。







2016年9月8日木曜日

T、強くなる

どこまで強くなるのだろう。
強さとは何だろう。
彼は一生懸命に自分と向かいあっていた。あのチェコでの大怪我から従前の自分をポジティブに否定し、今は心底から強くなるために自分を知ろうとしている。
体脂肪率は過去にない絞り方。パワーは過去最高値。怪我は完治。でもそれ以上に成長していたのは精神の強さだった。
この日はどんなレースよりも苦しくて厳しいトレーニング。嘔吐と頭痛が襲うほどのメニューだ。その過酷さを充分に理解していながら彼は飯山まで元気にやってきた。
これまで沢山のアスリートを見てきたし、この場所でトレーニングをしてきたが、怪我から復活した彼の走りは誰よりも果敢でファストラップを何度もたたき出した。
そして、自身の弱さを他人や機材のせいにしてしまうノンプロな姿勢を真向から否定できる強い姿がそこにあった。
国内にいてもまだ強くなれること、大きな夢を語るのではなく、目の前の強大な壁を打ち破るために必要な苦しみを、そのための感謝を。。。
彼を見ているとワクワクしてくる。
だから自分もその先に挑戦しようと思う。あの峠を越えてみよう。かつてのスピードを取り戻すためのトレーニングを課してみよう。理論も科学的に学習してみよう。
勇気が沸いてくる。