2020年11月15日日曜日

S、2020 Japan notional championship MTB XCO

2020年のチーム最大目標のレース、第33回全日本選手権マウンテンバイク・クロスカントリーが終了。結果、平野選手が2位、沢田選手が3位となった。

勝つのはたった一人。しかしチームはこの日を全員で勝利しようと決めていた。TEAM BRIDGESTONE Cyclingは勝つためのチーム。成績はもちろん、自分自身に勝つことを求めている。

すべての大会関係者、ファン、家族、スポンサー、サプライヤーに感謝すること。

何が起きてもフィニッシュするまで自分史上最強の走りを追求すること。

勝つと決めて勝つこと。

この3つがいつも変わらぬチームオーダーだ。

誰でも終わってから言えることは沢山ある。ファインダーから見た印象が多くの記事になり、結果だけが評価される。それがプロフェッショナルスポーツの世界であり、当たり前の実力主義だ。 でも、レース中に起きている真実と本質は戦う者にしか見えない。命を削って戦う選手達に敗北は存在しない。本当に大切なものは目に見えない。

チームは最高のサポートに支えられ、このレースを万感の思いでスタートすることができた。勝利を信じてくれる多くの方々の応援がどれだけ巨大な勇気を生んだろうか。我々は決して誰かに圧倒された訳ではない。ただこの日、優勝した選手との間に自ら0.2/hという差を生んでしまったということ。

標高1000mの低温期。長いジープ道、深くラフな芝、細かなパームの繰り返し、未熟で乾かない路面、流れないレイアウト。チームはこの環境を想定し、標高2000m地でのチーム合宿や短い周回路でのアタック、タイヤとサスペンションのセッティングなど、この日を何度もシミュレーションしてきた。低酸素テントも、寒雨中の長距離ワークも、過酷なペーサートレーニングもすべてこの日に向かって。

118日(日)、長野県富士見パノラマリゾート。当初1011日に秋田県で予定されていたが、1か月遅れでの開催となった全日本選手権。これまでの選手権で最も寒く遅い時期の開催になる。

レース当日の気温は予想よりも高く、前夜から朝方にかけて降った雨の影響が少なからず残る晴れ模様。4400m×5周の周回数は、1周あたりの組み立て方がとても繊細になる。前の選手をエサにしてパスする勢いで得られるラップタイムの速さは期待できない。強いライバルとの間合いや駆け引きが重要となる。ライバル達の実力からみて、優勝争いは序盤から限られた23名での先頭パックが展開され、1ラップ1516分、1時間20分前後の決戦と予想した。

そうなると、ミスなく確実にスタートから攻めないとならない。できるだけ前に位置して林のパームや処理に手間のかかる上りのロックセクションへ入って行く必要がある。走りのパワーよりもちょっとした区間の処理でタイム差が徐々に広がってしまうレイアウトだ。コースを見極め、その場にあった走り方に早めにスイッチしないとタイムを上げることが難しいコース。

機材はコースを攻める上でのメリットとデメリットのバランスを慎重に見極めてセッティングを行う。二人ともタイヤはしなやかなミディアムドライを選択。タイヤの特性を使いきれるよう空気圧は何度も見直した。サスペンションは選手ごとに違うコース上のパワーポイントにあわせたエア圧とリバウンドにセッティング。ロックアウトは選手の好みで固定力を変えた。

13:30定刻スタート。52名のエリート選手が一斉に長いジープ道の上りを駆け抜けていく。トラクションとパワーを両立させないとならないハイスピード区間。ホールショットは沢田選手がとり、超高速列車を牽引した。スタートダッシュを先頭で決めた平野選手だったが強く割り込む選手を前に出して5番手に位置し、落ち着いて林の中へと入って行く。

1周目から激しい鍔迫り合いが始まった。沢田選手は計画通りに先頭を譲り、背後についてライバルを見極める形をとる。予想通りのハイペース。それでも余裕をみせ、途中で先頭交代しながら早くも二人の先頭集団を形成した。全参加選手中の最速ラップを叩き出して第二集団まで11秒もの差を広げる。一方、平野選手は自分の前に入った選手のペースに同調し中切れ状態となった。第二集団から離脱できない状態が続き、序盤で大きくタイムロスしてしまう。

2周目。沢田選手は先頭集団でレースを展開。ややペースが落ち着きはじめたが先頭には出ず、後ろから追ってくる平野選手のジョイントを待った。しかし林の中やロックセクションの上り、特にダウンヒルで僅かずつ先頭との差を許してしまい、結果としてその数秒差がその後の逃げを許してしまうことになる。平野選手は第二集団から抜け出し、ようやく沢田選手に追い付いた。

3周目。チーム2選手でランデブー。4番手の選手を振り切り、中弛みの起きやすいこの周回に少しでも先頭との差を縮めようとチームで協調して前を追う。前を引く平野選手は上りの計測区間で先頭選手を上回るタイムを出した。沢田選手も前周回よりもラップタイムを上げて喰らいついているが、先頭との差はなかなか縮まらない。

4周目。先頭を追うチーム2選手は先頭交代しながら追走を諦めていない。しかし何故か平野選手の爆発的な走りが続かない。呼吸は閉口できるほどに落ち着いているが、掛からない脚を待っているかのようだ。沢田選手は平野選手に代わって前に出て、ファイナルラップに望みを繋げようとフルパワーで牽引した。

5周目。既にコース上には21名の選手しかいない。(80%カットルールやDNFでレースを下りた選手が31名にものぼった)ファイナルラップに来てようやく平野選手にキレのある走りが戻る。計測区間ラップは誰よりも速く、前周回より35秒以上もタイムを縮めてきたが、先頭の背中を捉えるには時遅すぎた。沢田選手は平野選手を牽引したことで大きく体力を消耗したが、もてる全ての力を振り絞り、最後までレースを諦めない走りをみせた。

フィニッシュラインを通過するまでレースは終わらないと声を掛け、フィードから観客の集まるエンドゾーンへ移動し、選手の帰りを待った。 

2位と3位でのフィニッシュ。

選手もチームスタッフもこの現実をしっかりと受け止めるのには時間がかかった。しかし、チームで勝利を目指したこの瞬間までの過酷で希望に満ちた日々と、沢山の感謝が自然とあふれてきた。

ブリヂストンサイクルはこのパンデミックの非常な状況でも全面的にチーム活動を信頼し、支え続けてくれた。シマノは常にチームの事情に寄り添い、国内外全てのレースを最高のコンポーネンツでサポートしてくれた。WAVEONEは選手のストレスを取り除く高性能の耐候性ウェア、新しい開発品を提供し続け、OGK KABUTOはもはや選手の身体の一部として、常に安全と安心を提供してくれている。明治は選手の厳しいトレーニングに高品質で安定した製品で応えてくれ、SR SUNTOURは信頼性の高いFフォークでライディングパフォーマンスを支えてくれた。日本旅行の遠征サポートは常に迅速で完璧なものだった。

そして沢山のファン、家族、仲間たち。どんな状況でも最大限の応援でチームと一緒に戦い続けてくれた。

ありがとうございました。

TEAM BRIDGESTONE Cyclingは皆様と一緒に夢を叶えていきます。












2020年11月3日火曜日

S、Team works

今、TEAM BRIDGESTONE Cyclingは過去最高の強さで全日本選手権を迎えようとしている。

7月19日の国内CJシリーズ開幕からの2連勝。順位ではなく選手個々の課題解決を優先した9月下関でのポディウム。そして10月に入り、チームは1か月先の勝利の精度を上げていくため、選手個々の特性に合わせたチームトレーニングを述べ10日間設定した。そのチームトレーニングの隙間も選手は自分と真っ向勝負するストイックな日々を過ごしてきている。

現地トレーニング以外でも、チームはガレージでのバイク整備やコーヒーブレイク、笑いの絶えないWebミーティングを重ねる。全員が一つの勝利のために常に情報交換することで、各自の修正箇所がより明確になっていくからだ。

平野選手は自宅を離れ高冷地に個人練習の宿舎を構えた。帰宅は週1度。高負荷と寒さの中でベストを尽くすトレーニングは、全日本選手権が行われる富士見パノラマスキー場の11月の低温と激しいレース展開を想定している。

「身体と対話してやれることは全部やってきました。万全なチームにも感謝しています。あとは今週末に向かってリラックスして疲労回復に努め、一発刺激を入れれば良いだけです。集大成のレース、自分が日本一になります。」

と優勝を宣言する。

沢田選手は長野市の自宅を軸に、恵まれた周辺環境で多彩なメニューをこなしてきた。彼は欧州から帰国した春以降、自分史上最高出力を更新し続けており、心技体とも近年で最も良い状態にある。

「僕はレースが大好きなので早くスタートしたい。ロードは(全日本選手権が)中止になりましたが、MTBはチーム一丸で全日本選手権を戦えるだけでも幸せです。来年も再来年も戦えるという意識じゃなく、この全日本がラストレースのつもりで走ります。勝ちます。」と自信が漲る。

チームオーダーはたった一つ。

「勝つと決めて勝つ」

結びに、スポンサー、サプライヤー、ファン、家族、全てのチーム関係者に感謝します。私たちTEAM BRIDGESTONE Cyclingは皆様の応援を力にかえて勝利へ向かいます。