2018年7月23日月曜日

W、Japan National championships MTB2018

酷暑の中、長野県の富士見パノラマスキー場で行われた2018年MTB全日本選手権大会が終了。結果、エリートでは最後までプッシュし続けた平野選手が準優勝、中盤まで平野選手を牽引した沢田選手が5位となった。優勝は4年連続となる山本選手(ドリームシーカーズ)。ジュニア男子では機材サポートアスリートの村上選手が初優勝を果たした。

チームにとって全日本選手権で勝利することはシーズン最大の目標。自分にとってもこのチームに就任してからMTB全日本選手権のエリートの頂点だけが未踏だ。U23チャンピオン、4年連続国内シリーズチャンピオン、UCIポイントリーダー、シクロクロス全日本チャンピオンを獲得していても、やはりこの日に勝つことは別格。思いは強い。
今季は2月末から始動し、海外UCIレースを主戦場として7月22日の決戦を目指してきた。選手は勝利を心の底から信じて、生活の全てを注ぎ込んできた。スポンサーもサプライヤーもファンも家族も仲間も、関わる全ての人が全力で支援してくれた。後悔はないが、勝利の約束を果たせなかった悔しさが残る。
一方、この日を盤石のチーム体制で迎えることができたこと、例え現場にいなくとも沢山の応援や理解があったこと、大きな希望があったことに深く感謝したい。チームテントはいつも多くの人で溢れ、声援を頂いた。

前日のマネージャーズミーティング。レースはオンタイムスケジュールだが、高気温を鑑みて周回数を減らすことが発表された。エリートは僅か4周回。ラップから想定されるレース時間は60分前後。これまで経験したことのないショートレースで日本一を決定することに会場は騒めいた。己の選手を有利にするために特定の人物が水面下で強かな行動をしたのではないかと多くの人が語る程の改定。UCIルール上では90分+アルファを想定してXCOレースが展開されるため、選手は毎日それに順応したトレーニングを行っている。従ってこの周回数のイメージづくりをしっかりと行わないとレースでのパフォーマンスが大きく狂ってしまう。自分はここで異論を唱えることはせず、ミーティング会場から即座に選手へメールした。
暑さ、全日本選手権、短時間スピード勝負。どう考えてもスタートとクーリングがポイントになる。暑さが尋常でない中では、カラダが限界に達しないギリギリで前に出てファーストラップをとっていくことが重要。しかも全日本選手権という空気の中では、通常先頭集団にいない選手が張り切って割り込んでくるはず。路面が乾燥してパフパフのスリッピーな状態だから落車の連鎖も考えられる。フィードでのボトルワーク、十分なクーリングは勝負に直結する。
チームミーティングでは充分な時間をかけてこれらを確認していくが、それは既にレースが始まっていることを指している。より綿密なチームワークが大切だ。
7月22日(日)14:30定刻。土煙を巻き上げ、エリート71名が一斉スタート。ホールショットを狙ってやはり多くの選手が突っ込んでくる。沢田・平野選手はスタートの反応に遅れ、7・8番手で最初のシングルトラックに入っていく。一列棒状になるトラックでは、実力差のある選手が混在することで先頭との差が僅かな距離でも拡大してしまう。
2周目、前田選手(弱虫ペダル)が先頭を牽引。オーバーペース覚悟で積極的にレースを引く背後ろに山本選手。その数十メートル後方に恩田選手(メリダ)。それを平野・沢田選手のチームパックが追う展開。レースはスタートからかなり速く、多くの選手が早い段階で振り落とされていった。
3周目、ポディウムを狙う3選手を追いかけて沢田選手が平野選手を牽引するようにフィードに戻ってくる。平野選手は先行する3選手との距離感を確認すると得意の登りで強烈なプッシュ。沢田選手から発射されたかのように加速していく。山本選手より速いラップを叩き出して前田・恩田選手を短距離でとらえ2位に浮上した。一方、沢田選手も何度もプッシュを試みるが、前の選手を捉えることができないガマンのレースが続いた。
4周目、山本選手が再びアタック。平野選手は渾身のプッシュを繰り出すが一時的に機材トラブルも発生し、その差は中々詰らない。それでもフィニッシュラインまで勝利を信じ、諦めない彼のアグレッシブなダンシングは観客を魅了した。沢田選手は後続を寄せ付けず、5位をキープしてのフィニッシュとなった。
フィニッシュ地点ではシーズン中は見たこともないような大勢の観客やマスコミに包まれる全日本。勝者やその関係者は興奮の歓喜に沸いている。でも自分はいつもと変わらず冷えたチームボトルを1本もって選手を迎える。言葉はあまり必要ない。
選手もチームも今できる全てを尽くしてフィニッシュしたのだから、肩を寄せて背中を叩くだけで伝え合うことができる。
フィニッシュ地点からチームテントに戻る途中、多くの人に「凄く良いレースをみせてもらいました」と声を掛けられた。そう言われる程に勝てなかった悔しさがこみ上げてくる。そして沢山の支援や応援に感謝の念が増していく。
この先は分からない。でもひとつだけ言えるのは、選手が日本一を目指すなら、オリンピックのポディウムを目指すなら、できる全てを尽くすことに変わりはないということ。
今回、ナショナルチャンピオンを獲得したら、自分はレースの場から卒業するつもりでいたが、どうやらそれはまだ許されないようだ。

TEAM BRIDGESTONE Cyclingを応援していただき、ありがとうございました。
暑いコース脇でも、家の中でも、スマホの画面でも、電車の中でも本当に沢山の応援がチームの力になりました。
我々は諦めません。必ずやポディウムの真ん中に立ちます。










2018年7月8日日曜日

W、Ankara MTB Cup UCI-C1

トルコの首都アンカラ。標高1000mの高原都市にあるBaskent Universityの敷地でAnkaraMTB Cup UCI-C1が開催された。
結果、沢田選手が4位、平野選手が7位となり、チームとしてUCI41ポイントを獲得。2週間後に控える全日本選手権制覇に向け、選手個々の課題をクリアにできた良いレースとなった。優勝はスロバキア・ナショナルチャンピオンMARTIN選手。
このレースにはフランス、スロバキア、ルーマニア、カザフスタンなどから強豪が集まった。翌週にナショナルチャンピオンシップを控えるトルコのエリート選手もモチベーションは非常に高い。
TEAM BRIDGESTONE Cyclingは、先週のスロベニアでのUCI-C2を終えてイタリアに移動し、トレーニングしてからトルコに水曜入りした。アンカラのアパートを拠点にレースに挑むが、このレースでは全日本選手権制覇を目的にした走りを求めている。ポディウムを狙っていくポジションで、沢田選手には上昇基調のレースを、平野選手には体調を意識したレースを展開することが重要となる。
コースとなったBaskent Universityは、25周年の新しい先進大学で、裏山を含む広大な土地を所有している。駐車場をスタート・フィニッシュとし、カフェテリアを通過して山岳へ向かい再びキャンパスに戻ってくる1周回4800m、標高差182mのレイアウト。路面は完全ドライでダウンヒルはパフパフ・ダスティーな痩せた土質で滑りやすく、登坂は硬くボコボコで走り難い。岩や小石が鋭利でパンクリスクも高く、トルコらしい曖昧なコース造りは幅1mもない箇所もあり、前日の公式練習が終わってもテクニカルフィードすら設置されていない。ボディーゼッケン・トランスポンダもレース直前まで配布されないといった、トルコらしい?!ストレスフルな運営だが、トルコ人は日本人好きが多く、フレンドリーだからつい許してしまう。
スタートは7日(土)14時。日中の最高気温32度、湿度25%、4800m6周回。スタート最前列にはスロバキア、トルコ、カザフスタンのナショナルチャンピオンが我々と同列に並び、2列目にはフランス、ルーマニア代表、昨年のフランスJrチャンピオンやカザフスタンの若手が睨む。
1周目、予定時刻より2分早いスタートの号砲に素早く反応したトルコ・ナショナルチャンピオンがホールショット。大きな混乱はなく平野・沢田選手を含むトップ集団が順当にコースに入っていく。登坂のグラベルに入ったところで平野選手がトップに出て1周目のレース前半を牽引し、続くフランスの2選手が後半に先頭に上がり早くもポディウムラインを形成していく。縦長の8名のパックは非常に速いが、沢田選手はこの中に割入り、平野選手は6・7番手に後退。
2周目、スタートから苦しい表情だったスロバキアのMARTIN選手が先行するフランス2選手にジョイントし3名の先頭パックを形成。それを追いかけるルーマニア選手を振り切った沢田選手が4番手でフィードに戻ってきた。平野選手はそのルーマニア選手とルーズパックで展開し7番手。
3周目、結果としてポディウムを獲得することになる3名の先頭パックが単独4番手の沢田選手との差をじりじりと開いていくが、沢田選手は中弛みせず、ケイデンスとパワーライドをコースの要所でバランスさせた彼らしい走りで後ろにライバルを追いつかせない。一方、平野選手は再度プッシュし、沢田選手が見える5・6番手まで上がるがセカンドパックを形成できない。
4周目、レースは硬直。トルコ・ナショナルチャンピオン、カザフスタン・ナショナルチャンピオンはレースから脱落。先頭パックは再びラップを上げていく。パンクする選手が続発し、テクニカルフィードは混乱。周回遅れの選手が交雑。
5周目、沢田選手は多くの選手が力強く踏んでいく舗装区間で敢えてレスト。クレバーな走りで4番手の一人旅が続く。平野選手はパンクリスクを避けるためにセイフティーなダウンヒル。前後の選手とバラけながら無理せずに7番手をキープ。
6周目、スロバキアのMARTIN選手が先頭パックから飛び出し、フランスの2選手を切り離していく。4番手の沢田選手はラストラップを意識しながらプッシュし、今ある力を出し切る格好でフィニッシュ。平野選手は順位をキープしたまま7番手でフィニッシュに戻ってきた。
今回の遠征、残日はアンカラでトレーニングし、間もなく帰国。来週は長野県内でチーム合宿を行い、いよいよ全日本選手権へ。
スポンサー、サプライヤー、ファン、家族に感謝します。
そして、TEAM BRIDGESTONE Cyclingは強い走りで沢山の応援・支援に応えていきます。

<追伸>大雨による被害に遭われた方々に謹んでお悔やみを申し上げます。









2018年7月3日火曜日

W、Crni Vrh XCO UCI-2

今季後半スタートに選んだのはスロベニアCrni VrhでのUCI-2レース。結果、平野選手が11位、沢田選手14位(暫定)となった。
会場はヴェネチアから2時間程の静かな山間。飯山やアメリカ・ウィンダムに似たようなコンパクトなスキーリゾートエリア。だがコースはワールドカップレベルのタフでテクニカルなレイアウトが用意されている。イタリア、フランス、オーストリア、ウクライナ、ポーランドなど欧州各地から強いU23や次週のワールドカップを見据えたエリートライダーがエントリー。大人数ではないが、ここに来ないと体験できない非常に高い次元のレース展開に挑める。
チームは初めてスロベニアに入り、首都リュブリャナにアパートを構えた。久しぶりのフルメンバーでの海外生活。今回は3週間後の全日本選手権制覇のための遠征と位置付けている。
レースでのUCIポイント獲得は副産物。日本では経験できないレベルでポイント獲得圏内の走りに順応することが重要。しかもスロベニアのコースは土壌条件も日本的な腐葉土が多く、質的要素が全日本選手権のコース(富士見)にも通じる。翌週のワールドカップ(ITA)を避けてこのレースに挑む理由がここにある。
レースは7月1日、午前にレジストレーション、12時にマネージャーミーティング、15時スタートのスケジュール。
スタートは、最前列に№3の平野選手、2列目に№5の沢田選手。15時オンタイムだとミーティングで確認した号砲は「選手が揃ったから早めに撃つよ!」で3分前スタート。観客もフィーダーも急いでコースから外れ、白煙をあげて高速列車が通り過ぎる。「やっぱり。。。」
1周目、スタートから誰の背中も見ずに優勝することになるゼッケン№1がホールショット。チームは平野・沢田両選手が5・6番手で10名程の先頭パックで林のシングルトラックに入っていく。このコースは1周3.5㎞、標高差165m。起伏に富んだエリート7周回のハードなレースが始まった。
2周目、沢田選手は先頭1名を追うセカンドパックで展開。5番手前後。身体の動きは軽く息遣いも落ち着いていて、ここまでの調整が正解であったことが分かる。一方、平野選手は遅れて10番手前後。普通に会話できる程に呼吸は安定しているが、身体に変調を覚えたため、敢えて走りを抑制。
3周目、パックがバラけて単独走行していた沢田選手に追いつこうとするフレンチ2選手らに平野選手もジョイント。フィードでは5名程のパックが再形成された。この時点で先頭から2分弱のビハインド。それをポディウム圏内の選手がバラけて追う展開。
4周目、沢田選手を交わした平野選手は10番手、沢田選手は15番手前後。UCIポイント獲得園内の選手のプッシュが続く。
5周目、レースは完全にコンクリート状態。ラップもプッシュも動きが止まったかのようにこの周回が進んだ。平野選手はリアタイヤをヒットさせてエア漏れしたがホイール交換せずに続行。沢田選手も現状の自分に集中して走っている。
6周目、ウクライナの選手が猛烈にプッシュ。UCIポイント圏内に割入り、この時点で平野選手は11番手。沢田選手は14番手。機材トラブルも発生し始め、リタイアする選手も出てきた。
7周目、ハードなレースは1.5時間を超えようとする時間帯へ。80%ルールで多くの選手がカットされるサバイバル。平野選手は体調を考えて無理せずに11番手、沢田選手は前半の課題解決をした上での14番手でフィニッシュした。
次週はトルコ・アンカラで開催されるUCI-1。イタリアでのリカバリーを挟み、次はポディウム獲得を目標とするレース展開へ。
沢山のサポーター、スポンサー、サプライヤー各位の応援に感謝致します。
TEAM BRIDGESTONE Cyclingは、より強くなります。