2018年10月27日土曜日

W、AtticaGreece MTB S2

チームとしての2018シーズン最終戦はギリシャのステージレースUCI-S2。
結果、平野選手は総合23位となり、UCIポイントを獲得した。
トルコでのXCO3連戦を終え、一時帰国して直ぐにギリシャへと渡った。春のレパントXCO2連戦以来、2回目となるギリシャ遠征だが、今回はアテネ近郊のマラソナス(マラソンの語源になった場所)でのステージレース。XTT、XCC、XCOと3つの異なる競技方式でタイム差を競う。選手にとっては総合的な力が試されるタフなレース。このレースには平野選手のみがエントリー。(沢田選手はシクロクロスのシーズンイン)彼のシーズンファイナルはここになり、全ての課題を暴露しながらUCIポイントを獲得することが目標。
そして、このレースはUCIステージレースファイナル。先に行われた2つのステージレースよりもエントリーが増え、欧州の強豪が集まってレベルが一気に高くなっている。ロシア、ルーマニア、イスラエル、スロバキアはナショナルチームを送り込んできた。日本からは我々の他にドリームシーカーレーシングチームがエントリー。UCIポイントを獲得するのは簡単じゃない。
ただ、このレースは当初の計画より大幅に変更された。それは本年7月中旬に起こった大火災により、広大な面積の山林と家屋、人命が火災によって失われ、その中心地がレースエリアとして設計されていたためだ。3か月たった今も焦げた臭いや焼け爛れた家屋は消えていない。
チームとしては、レースでのハイパフォーマンスが最優先だが、人としてこうした街の復興にほんの僅かでも役立つように心がけることがとても重要だろう。短期間の滞在であっても会話やレストランでの支払いで出来ることはある。同じホテルにはキプロス、フィンランド、イタリアなどから多くのゲストが泊まりに来ていた。皆、オフシーズンの海岸線を楽しみに来ている訳ではないという。
10月19日(金)15:30~XTT
第1日目は8㎞の個人TT。マラソナス中心街から湖までのヒルクライム。2分間隔でスタート。平野選手は17:18スタートのゼッケン8番。農村から山岳地帯に走るアスファルトと荒れた砂利路面、終盤は20%超の登坂。コツを知らないでアタックすると撃沈するコースレイアウトだ。平野選手のタイヤチョイスは最新のシュワルベ・NewRALPH+REYの組み合わせ。彼の2分後には先のレースを完全制覇し、このTTmも優勝することになるゼッケン7番。平野選手は大パワーが必要となるこうしたレイアウトは得意でないが、今できるアタックを仕掛け追い込んだ。結果、ターゲットとしていたトップとの2分未満の差はクリアして26位でフィニッシュ。
10月20日(土)16:00 XCC
第2日目は2㎞×8Lapのクロスカントリーサーキット。海岸近くの松林のフラット基調なコースで、林の中のコーナーが細かく、土壌も深めでスリッピー。コース幅はUCI規定未満で抜きどころに余裕がないレイアウト。平野選手は前日の順位でのスタートとなるためほぼ最後列。体調は良いのだが、トップ集団からの長い列車で渋滞もあり、前の選手をパスできない展開から始まった。中盤は積極的にプッシュを繰り返すが、狭いコースの脇の草木が邪魔したりライバルと接触したりと思うように順位を上げれない。体調の良さとは裏腹にレースは硬直気味。終盤はレースが落ち着き、トップとのタイム差を徐々に詰めていくが大きく順位を上げることができず27位でフィニッシュ。
10月21日(日)13:30 XCO
最終日は3.7㎞×9Lapのクロスカントリーオリンピック。アテネ寄りのフェリー港を見下ろす森林公園が会場。難しくはないが、高速になる程にゴーストップが増えるシングルトラック。スタートフィニッシュエリアの100m程しかない並走できないタイトなコース。
平野選手はやはり最後尾からのスタート。完全に不利な位置であるが、序盤は途切れない長い列車の後方から諦めずに前を追う。中盤はレースが落ち着き始めた中で積極的なプッシュを繰り返し、集団の最速ラップを叩き出して15番手まで一気に順位を上げる。ダンシングのリズムも悪くない。目の前に10番手前後の集団も見えている。しかし終盤7周回に入ろうとすると急激に身体の動きが止まってしまう。諦めず集中するが、ガマンするしかない展開。順位をどんどん落としてしまい21位でフィニッシュ。
結果、3日間のステージレース総合は23位となった。
当初からの遠征目標であった、課題の暴露、UCIポイントの確実な獲得は成しえたと思う。弱さを隠さずに明かしたことで、2019シーズンへの強い気持ちが湧いてくる。
全日本選手権を制すること、アジアチャンピオンになること、東京オリンピックに出場するには、こうして一歩ずつ、1ペダリングずつ課題を克服し、昨日より強くなるしか手はない。どんなに過酷な状況・不利な条件でも、1㎜も譲らない強靭なメンタルが必要になる。それは本人の努力だけではなく、多くの支援や応援、理解のもとに成り立っていくもの。選手は命を削り、多くの犠牲を払って目標に向かっている。だからこそ、決して一人きりにはさせない。一緒にスタートし、一緒にフィニッシュする。それが自分に課せられた使命なのだとあらためて思う。そして応援して頂く全ての方に深く感謝し、最高の結果で恩返ししたい。
2018MTBシーズンをありがとうございました。
TEAM BRIDGESTONE Cyclingは2019シーズンに向かって今日からスタートします。























2018年10月15日月曜日

W、Turkey life

トルコでの生活を記してみたい。
ここ数年間、UCIレースのために遠征する渡航先にトルコがあがる。近年政府がスポーツに力を入れており、自転車も然り。
エントリー費は総じて無料化され、トルコ国内チームには選手だけの遠征は認めず、コーチ、メカニックを帯同しなければチーム活動が出来ない仕組み。そのかわり、参加側だけに負担させず、国が補助金を出しているのか、チームスタッフには大会毎に手当てが支給される。
海外チームの招待も活発。欧州、ロシアから日本人では誰も前を走れない高いレベルの選手が集まる。無論、自主的にUCIポイント獲得のために来る選手が多いが、オルガナイザーから招待されるチームも増えている。我々TEAM BRIDGESTONE cycling もUCIチームとしてトルコでの活動が認められ、今回は現地スポンサーのターキッシュエアラインズにより航空券がフリーとなった。
よって、トルコのUCIレースはここ数年間で飛躍的にレベルが上がった。ポディウムに上がるには、どのワールドカップでも完走するレベル、勝利するにはワールドカップトップ10のレベルが必要だ。
一方、この国での生活は日本で想像するより遥かに快適かも知れない。
物価は安く、食事は外れなく美味しい。日本人が好む野菜も沢山とれ、アイラン(甘くないヨーグルトドリンク)は料理との相性抜群でうまい。人柄はフレンドリーで海外の人間に警戒心があるどころか通じないと分かっていてもトルコ語で何とか交流したがる。
WIFI環境はフランスより良く、幹線道路は日本以上に良かったりする。(道路は急速に発達しているからナビは1年前データでも使えなかったりする・・・)
有料道路は日本のETCに似たシステムが入り、ゲートで料金を払うことはなくなっている。プレートナンバーをカメラが認識し、料金を後請求する仕組み。レンタカーならHGSというゲートを通ればよく、レンタカー会社が後日デポジットから精算する。現地のクルマはHGSの事前登録ステッカーをフロントガラスに貼っているが、レンタカーには貼られていない。そのためゲートを通るたびに黄色ランプとサイレンが鳴り、ちょっと怖くなるが、大丈夫な様子。今のところペナルティーもなく正規料金で精算されている。
お茶(紅茶)は挨拶がわり。小さな店にも柱に専用電話みたいなものがあり、お茶屋さんが直ぐにデリバリーしてくる。トルコではお茶の誘いを断ってはいけない雰囲気だ。レストランで断っても出てくるし。。
総じて日本人は好かれる。クルマもバイクも橋も発電所も家電もJAPAN 神話は凄い。全てが高品質で一生懸命に仕事するのが日本人らしい。盆栽も武道のこともよく知っている。そして、歴史的にもトルコ人を救った友人扱い。だから彼らが日本人の友人をもつことは大きな意味があるという。今回はSakarya自転車協会に招待されて親善交流会も開かれ、1Dayサイクリングも企画された。
治安はどうか。こればかりは訪問者の意識と現場次第だろう。どの国も安全を完全担保することはできない。トルコは危ない国ではない。でも危険に遭遇するリスクはある。というのが正解だろうと思う。日本人でも危機管理能力は個人で異なるが、日本以外の国に来たら、その国の特性を早く取得するしか手がない。
今回、友人と言える人との出会いがとても多かった。それも形ばかりの友人ではない。100㎞の道のりを自転車に乗り、フェリーまで使ってレースの応援に来てくれた。忙しいチーム事情を知って、あえて我々から離れて応援してくれている。スタート前のアップ時やレース中のフィードで声を掛けてくることはない。そっと見守ってくれている。ジャージも交換ではなくトルコを忘れないようにとプレゼントしてくれた。
数百km先の友人からは応援メールが届く。それも日本ではよくある「頑張れ!活躍を祈る」ではない。「何か困ったことがあれば遠慮なく言え。直ぐに近くの友人を通して助ける。」と。友人とはどんな関係なのかを彼らはよく理解している。
トルコは大好きな場所となった。また彼らに会いに行こう。必ず行こうと思う。

本日からギリシャに向けて出発。2018シーズンラストのMTBレース。