2018年11月28日水曜日

W、Root

根っこ。
植物の根はどうして張るのか。
あの小さな種から伸びるパワーとモチベーションはどこにあるのか。
当たり前をよく鑑みると、そこには寸分の狂いもない動きと、目指すべき未来がはっきりと掲げられている。
根は地上部のために働く命の根源。それは誰もが当たり前に知っている。酸素と水と肥料成分を吸って、茎葉に送り込む。地上部は光合成を行って養分を転流させ、植物は大きくなっていく。
では、植物の種類によって根張りの性質が全く異なるのは何故だろう。
発芽する時、まわりに肥料がなくても(ない方が)よく伸びるのは何故だろう。
土の中に根が活発に張り巡るたった数日間の初期の勢いが、その後の成長を決めてしまうのは何故だろう。
水に浸かった土の中なら酸欠で壊死するのに、種まきからの水耕栽培なら根が張るのは何故だろう。
植物は自分の生涯設計を明確に持っている。そして根はその全ての源。
高層ビルを建てるなら真っ直ぐに沢山の強靭な柱を地下深くまで打ち込む必要がある。
大家族なら皆が満腹になるよう安くて良い食料を沢山手に入れようとする。
砂漠のように厳しい環境を旅するなら、それを耐え忍ぶ貯蔵タンクと驚異的な回復力をもつ。
常に安定した水分が必要なら誰にも邪魔されないだけの深い井戸を掘る。
生まれる場所を自分で決めることはできないのだから、その場所を愛そうと努力する。
自分がどうありたいか。
世の中は地上部だけを追いかけ、己を優位にしよう、邪魔者を排除しようと競争する。でも本質は誰にも見えない地下部にある。種は生命をかけてその環境に挑み、生き抜く。
自分の根はどうだろうか。意志を曲げていないだろうか。ひたすら目指す未来に向かって着実に伸ばし続けているだろうか。不運を前に諦めてしまっていないだろうか。
自分を失わないこと。
地上部がどんなに過酷で自己中心的な集合地帯であっても、自分の根を張ればいい。
誰にも見えない自分の根を張る。






2018年11月19日月曜日

W、SuperCross Nobeyama UCI-C2/C1CX

11月17日-18日の2日間で行われた野辺山スーパークロスが閉幕。今年は1日目がUCI-C2、2日目がUCI-C1。野辺山らしい会場の雰囲気はそのままだが、今回はこれまでと天気が違った。
快晴続きで路面はファインドライ。気温も大きく下がらないため洗車場のプールも凍結しない。八ヶ岳山頂は無冠雪。泥と低温で選手を苦しめる長野県内の2大レースは飯山に続きここでも土埃が舞うレースとなった。路面はレースが進むごとに削られ、土中から鋭利な石が露出してレース後半に行くほどにパンクリスクが増していった。
結果、沢田選手はDAY1を8位、DAY2を7位でフィニッシュし、2日連続でシングルリザルトでのUCIポイント獲得となった。
DAY1、体調こそ悪くないものの、沢田選手は10月のMTBシーズンから休まずにシクロクロスシーズンに移行している。2列目スタートで、ファーストラップから海外勢の強い引きで展開するハイスピードの高速列車に乗ることは簡単ではない。先頭集団は10名、8名、6名、4名とふるい落とされていく。沢田選手も得意のセクションでキレのある走りをみせて中盤まで粘ったものの、フロントタイヤもパンクさせてラップダウン。後半にかけてはラップの落ちない先頭パックとの差が決定的になり、前後の選手と距離をとりながらの8位フィニッシュとなった。
DAY2、前日と同じコースレイアウト。スタートダッシュでは前に出れず10番手前後でコースイン。しかし前日とは異なるパワフルな走りで5番手前後を位置どる。中盤は3名が抜け出した先頭パックを容認する格好となるが、セカンドパックを積極的に牽引して前を追う展開。終盤はリアタイヤをパンクさせてラップを落としてしまうが、最後まで集中を切らさない粘りのある走りをみせて7位フィニッシュ。
一見すると2日間ともポディウムにのぼり、DAY2では海外勢を抑えて優勝した前田公平選手との差を比較する観客が多かったに違いない。確かに野辺山のハイスピードコースで彼は強かった。でもそれはそれでとてもよいこと。日本人が海外勢に果敢にアタックして勝つことは更にこの競技を盛り上げていくし、このレースが沢田選手の火に油を注ぐことになった。チームと沢田選手は今季全てのシクロクロス活動をナショナルチャンピオンジャージ奪還だけに向けており、国内シリーズ制覇やUCIポイント獲得は目的にない。
一方、両日とも沢田選手の課題は明白だ。これを着実に解決できたとき、沢田選手はシクロクロスはもちろん、MTBでもナショナルチャンピオンジャージを手にすることができるだろう。1分、1時間、1㎜ずつ、1㎝ずつ確実に強くなっていくはずだ。
そして現在、CXバイクはハイエンドのカーボンフレームにディスクブレーキが当たり前の時代。その中で重く硬いアルミニウムフレームのCX6は孤高の存在になっている。沢田選手は2年前の全日本選手権をCX6のカンチブレーキで制し、バイク取材陣が困っていたことを思い出す。
重要なのは、機材強度よりも競技強度が上回るシクロクロスというスポーツで、どれだけ自由に泳ぐことができるかどうか。機材のセッティングが完璧かどうか。ライダーとバイクがシンクロして、コースをフローして行くテクニック。12月9日、全日本選手権で沢田選手を応援して欲しい。彼はCX6と共に最高の走りで観客を魅了するに違いない。
さて、野辺山の会場では多くの人から「一時帰国ですね」「日本語はまだ話せますか」と言われた(笑)。それだけチームのUCI活動が活発化したシーズンだった。ビジネスも然り。11か月間で既に46フライトを超えている。莫大なエネルギーで世界中を巡っていることをあらためて自分に問う。
多くのスポンサー、サプライヤー、ファン、仲間、家族に支えられていることに感謝しながら2018年の大勝負に向かいたい。










2018年11月4日日曜日

W、Cyclocross Meeting IIYAMA 2Days

シクロクロスミーティング飯山大会。
11月3-4日、快晴と紅葉最盛期の飯山で2日間のナイター&デイレース。
2018年の飯山CXのコンセプトはダンシング。ノンタイトルのレースの中で、プロDJ河合桂馬とレースをシンクロさせて、選手も観客もスタッフも最高に楽しい空間にしようというもの。飯山らしくないからちょっぴり寂しいと沢山の選手に言わしめた超快晴の暖かいハードドライな環境に、ハイスピードのレースの波長に合わせた音楽が選手の心拍と見る者の感動を演出して、新しい飯山スタイルを生んでいった。
コースはいつもの飯山スタイル。遠慮なしのレイアウト。650本全ての杭を自分の手で打ち込んだ。流れを止めない3Dコースはファンライドなら最高に楽しいが、レースになれば休む場所を奪うように設計している。日本のどこにも似ていない、シクロクロスの全ての要素を組み込んだ世界基準のレイアウト。
スポンサーも素晴らしい。3000mに延長されたNewコースはBRIDGESTONEテープで埋められ、SOTOのバーナーは夜の会場と勝者を照らし、FULLMARKSは出店しながら参加賞と副賞を、神仏の鷲森は貴重な漆塗りのメダルと升カップ。戸狩温泉スキー場は2019リフト券、戸狩温泉観光協会はペア宿泊券を大量に奢ってくれた。
飯山市役所の職員各位、ボランティアは貴重な秋の週末を快く割いて集まる。動きも笑顔も素晴らしい演出のひとつ。市内の若者集団はソバやスープ、コーヒーの屋台で盛り上げ、審判団はたった7名でハードな2日間をパーフェクトジャッジ。上位3選手のフィニッシュから5分後には表彰式を遂行し、MCが絶えることは皆無だ。
縁の下の力持ちは大会数日前から会場入りし、慣れない作業を夜遅くまで手伝ってくれた。その苦労は来年の再会を約束する力になっている。
多くの選手はスタッフに、ご苦労様です、と声を掛けて試走している。お客様態度はなく、この大会を一緒に盛り上げるスタッフを労う姿に微笑んでしまう場面は珍しくない。
そう、オルガナイザーとは、大会を企画運営する総指揮者ではなく、より多くの人に感謝する役割なのかも知れない。
そして、この大会は全ての参加者でつくる2日間だけのチームなんだと思う。
大会最後、MCから渡されたマイクにこう話した。
「また必ず来年ここでお会いしましょう!アリガトウゴザイマシタ!!」
こんな幸せなオルガナイザーはいない。
祭りの終わり。
この余韻をドイツとオランダへのフライトでもう一度だけ楽しもうと思う。